山下白雨 葛飾北斎 富嶽三十六景 美術館 美の巨人たち
山下白雨 葛飾北斎 富嶽三十六景 美術館 美の巨人たち

 

美の巨人たち「北斎父娘特集」

葛飾北斎『富嶽三十六景』「山下白雨」
美の巨人たちで取り上げられるのは葛飾北斎の「山下白雨」
「山下白雨」のある美術館や描かれた場所の特定やこの絵に雨が描かれていない理由そして、葛飾北斎の人生哲学とは?

山下白雨のある美術館は?

[ad#336]

「山下白雨」は東京富士美術館に所蔵されています。

住所:〒192-0016
東京都八王子市谷野町492-1
TEL:042-691-4511
開館時間:10:00~17:00
(16:30受付終了)
休館日:毎週月曜日(祝日の場合は
開館。翌火曜日は振替休館)

「山下白雨」の読みは
「山下白雨(さんかはくう) と読みます。

白雨とは夕立のことです。

この絵の特徴は快晴の富士山の山頂と
山麓に下ると漆黒の闇に包まれた雲の中に光る一瞬の稲妻が描かれています。

山頂は快晴なのに地上で激しい雨が降っていることがイメージされる絵で、

凱風快晴が「赤富士」と呼ばれるのに対し て、この作品は「黒富士」と呼ばれています。

凱風快晴「赤富士」
凱風快晴「赤富士」

「神奈川沖浪裏」「凱風快晴」ととみに
北斎の冨嶽三十六景のシリーズの三役の ひとつといわれている作品です。

神奈川沖浪裏
神奈川沖浪裏

「山下白雨」の描かれた場所は?

北斎の富嶽三十六景のほとんどの作品では
描いた場所がそのままタイトルになっています。

多くの北斎の作品には人と富士が描かれているのですが、この凱風快晴「赤富士」と山下白雨の「黒富士」には人は描かれていません。

そのため、この作品は今までは場所の特定が難しいとされてきました。
今回、最先端の技術を駆使して作品の描かれた場所が明らかになります。

当時では、考えられなかった視点から富士を描いている事に驚かされます。

まず、赤富士は朝日を浴びて赤く見えている。その場所は山梨県側から見ていることがわかります。

そして、山頂が平で稜線の匂配が右のほうがきつく見える場所、そこは
北東側で三ツ峠1785mの山です。

たしかに、三ツ峠から

違いは北斎の富士の方がとんがって見えるということ
見た富士のようですね。

しかし、富士山の高さを縦方向に2倍にすると、北斎の絵とぴったりになります。

北斎は見ている富士山の高さを2倍にすることでその崇高さを表現したのかもしれません。

では、黒富士「山下白雨」はどこから見たものなのでしょうか?
その場所を突き止めたとき
天才葛飾北斎が驚異の目を持っていたことがわかります。

「山下白雨」になぜ雨が描かれていないのか?

[ad#336]

麓の黒の墨の発色によってこの絵の質感が違ってきます。
この絵は稲妻がもうひとつの主題となっている絵です。

自然の美しさと厳しさを表現した絵です。

そして、画題には「白雨」とあるのに雨が描かれていないのはなぜなのか。

それは、「山下白雨」を描いた場所を知ればその理由がわかります。

この富士はどこから、いったいどのようにして見た富士なのでしょうか?

剣が峰がくっきりと見えるのが特徴で

CGを使ってまず富士の高さを2倍にして高度を2500mから観た位置に合わせ、「山下白雨」の左側に描かれている御坂山地の見える場所を特定します。

すると、ピッタリ。

この時代にヘリコプターなどはなかったのに
北斎は2500mの上空視点から富士を見ていた事になります。

彼は2500mの上空の空想から見上げる富士を見下ろす富士として描いたということです。

70代を迎えた北斎の人生哲学とは?

絵を見る人と共感する気はない
富士をクローズアップして描く、富士だけ書く。

動じることなく悠然と構える富士の威容。

北斎の驚くべき目は上空2500mまでにも登り
誰も見たことのない風景に富士を仕上げたのです。

ですから、そこから雨は見えない、描かない。

改名すること30回あまり居を移すこと93回
絵を描くこと以外は無頓着

北斎は2度の結婚をし
2男4女をもうけています。

2番目の妻との間に生まれた「お栄」が唯一の後継でした。
彼女はこんな絵を残しています。

吉原格子先之図
吉原格子先之図

吉原格子先之図

吉原の夜の情景です
深い闇に浮かび上がる柔らかな光、陰影の中に浮かび上がる怪しい美しさに見る恐るべき才能です。

そんな娘に支えられながら北斎は晩年まで富士に挑み続けました。

 

富士を超えて

富士越龍図

富士越龍図
富士越龍図

北斎の拙筆です。

90歳で再び富士を描く、描いても描ききれぬ富士を超える一匹の龍
自らの姿を託して

これにある絵を重ねると
曲線が似ている事に気がつきます。

夜桜美人図
夜桜美人図

夜桜美人図

陰影の繊細な表現、随所に描かれた超絶技法
北斎の娘が描いた美人画です。

実は北斎は浮世絵にかけては
娘にはかなわないと言っていたそうです。

実は父の晩年の作品はこの娘が描いていたとも言われています。

我々が富士を見ている
いや、富士が我々を見ている
描かなかったはずの雨の音が聞こえてきませんか。

葛飾北斎作 黒富士 山下白雨

[ad#336]

<葛飾北斎に関する記事>
山下白雨 葛飾北斎 富嶽三十六景 美術館 美の巨人たち

葛飾北斎の娘 応為『夜桜美人図』